yukinoue

「本」と「ゆきのうえ」の のどかな日々
2001.10.1
 その時までの私の世界は、きっと、原色だったろう。けれど、その原色は渋いニュアンスのある色に変わろうとしていた。一人の男の出現によって、季節がはっきりと区切られていくのを、秘かに自分の心の中に感じていた。――私が「もっとも書き出しが好きな本」のうちの1冊。荒木陽子「愛情生活」(マガジンハウス)を再読。健康さと気性の良さは、まぎれもなく才能のひとつだと知る。この人は、もっと文章を書くべきだった。


2001.9.29
 小学生のころ、クラスメイトがお誕生日プレゼントに、「ゆきちゃんに似ているから」とお菓子の包装紙をくれた。その時はじめて、東郷青児という名前を知った。今だったらそれが最大級の誉め言葉であることが分かる。けれどその時は、「なんでこんなものをくれるんだろう」と理解できなくて、そこに淡い色で描いてある女性も、ただ古風な女の人にしか見えなかった。
そんなことを思い出しながら読んだ「大人の絵本」(角川春樹事務所)。宇野千代の短編を、真珠を一粒づつ手のひらにのせるようにして楽しむ。東郷青児の絵も、新鮮な輝きで目に映る。良い本だった。


2001.9.27
 つい先日、映画を(ビデオで)観たものだから読み始めた「『2001年宇宙の旅』講義」(巽孝之 平凡社新書)。読み進むうちにすっかり引き込まれてしまう。SF的な世界観に触れるのは久しぶり。人間の想像力がどう継承されてきたか、「2001年」から「マトリックス」へと電脳空間の概念がどう押し進められてきたか概観できて興味深かった。グローバルヴィレッジの実現は、全地球的な故郷喪失を意味する。未来に思いを馳せるというのは、「今、私たちに何が想像できないか」を考えることでもある。


2001.9.25
 「パイロットの妻」。新潮社クレスト・ブックスの新刊。訳者(高見浩)があとがきで「日本風に言えば純文学とエンタテイメントのあわいに軸足を置いて、等身大の人間の悲劇を静かに、真摯に描いていく‥‥」と書いていたのに「その通り」と思った。このシリーズ全体に共通する印象。それにしても、作中でパイロットの夫が主人公の妻を「おまえ」と呼ぶたびに、背中がむずむずした。少なくとも私はそういうふうに呼ばれたいと思わないけれど。 英語ではどうなってるのだろう?


2001.9.23
 ブックオフで「韓国現代詩選」(花神社)を購入。茨木のり子は、天声人語で話題になったあの詩よりも、この訳業でこそ評価されるべきだと思うのだが。


2001.9.21
 明日晴れたら公園の釣り堀に行く約束になっているので、ウォーミングアップとして「かしこい ちいさな さかな」(福音館書店)を読む。ほんのりハッピーになった。同じクロケット・ジョンソンの名作「はろるどのむらさきのくれよん」(文化出版局)を読みたくてたまらない気持ちになるけれど、手元にない。今度図書館に行ったら、忘れずに借りてこよう。


2001.9.20
 テレビでアフガニスタンの廃墟を見ながら、サイードの「パレスチナへ帰る」(作品社)を読む。この本に収められているエッセイは1992年から99年の間に書かれたもの。サイードが今何を考えてるか知りたい。もちろん、これは私だけではないだろうけど。テレビの中のテロリストは「アメリカ人の心には大きな穴があいている」と言っていた。


2001.9.17 今日はいい天気
 仕事の必要から「白い犬とワルツを」(新潮文庫)を読み始める。あまりの退屈さにいたたまれない気持ちになる。この本の作者みたいなアメリカ人が今頃、正義の名のもとに拳を振り上げてるに違いないと、勝手に確信する。テリー・ケイには、石原吉郎を読め、と言いたい。



2001.9.14
 アンソロジー「愛と憎しみ」を読む。筑摩書房から昔出た「新・文学の森」の一冊。今さらながら、このシリーズの贅沢さに気づく。こんなの、これから先どの出版社からも当分出ないんだろうな。あーあ。


recent days of yukinoue previous days of yukinoue