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■2004.11.25
「新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド」(太田出版)。作家になりたいと思ったことは一度もないにもかかわらず、「それでも作家になりたい人のためのブックガイド」は繰り返し読んだ記憶があって、あの本から学んだことは少なくないと今でも思えるのだが、なんともう10年以上経っているのだという。取り上げられる作家の面子が前作とまったく違っていて、旧版を引っ張り出してみれば、登場している作家の名前が古色蒼然としているのにショックを覚える。日本の小説に何が起こっているのかを知ることと文学に与することはほとんど正反対のおこないなのだという、日々感じるいやな予感が正しいものであることをずばり指摘されて、すっきりするような、悲しいような。でも、そう言いながら、取り上げられている本でまだ読んでないものに引き寄せられる自分がいて、ほっとするような、悲しいような。 |
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■2004.11.23
アレナスを読んでキューバに興味を持ち、じゃあ、最近何かと話題のチェ・ゲバラを読もうと思って本屋へ行ったのだが、なぜか「完訳 マルコムX」(中央文庫)というのを買ってきてしまう。目的の本があって出かけて行って違う本を買って帰ることはよくあることなので今さら何とも思わないけれど、そうやって読んだ本がとてもよかったりすると、本というものが紙一重の出会いそのものであることに感謝したい気持ちになる。
この本は名著として名前が挙げられることも多いすぐれた本だが、それは、マルコムXの劇的な人生や個性的な人間性だけが理由ではなくて、やはり、膨大なインタビューをまとめあげたアレックス・ヘイリィの功績だと思う。この2巻本の最後には、「エピローグ」と題されるヘイリィによる長いがあって、そこにはマルコムXとのあつい友情と緊張感を同時にはらんだ関係が記されていて、とても興味深い。
この本は、稀有な人物の自伝ではあるけれど、同時に、人間が成長していくというのはどういうことかという普遍的なテーマについて書かれた本だと思った。マルコムXは突出した才能も欠点も多く持っていたが、人はどう生きていくべきなのかと考え続けていたし、自分がまちがっていたらそれを直そうと努力し続けた人間でもあった。
実は並行して、同じ中公文庫の「ガンジー自伝」も読んだのだけれど、優等生の作文を読むみたいに退屈だった。社会への貢献度はともかく、読み物としてはマルコムXのほうが断然いい。やっぱり、アンパンマンよりバイキンマンだね。 |
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■2004.11.20
「夜になるまえに」(国書刊行会)は、1943年にキューバで生まれた作家で詩人のレイナルド・アレナスの自伝。とは言っても、この作家のことは、名前を聞いたことがある程度で、作品を読んだことはない。
キューバ革命を経てアメリカへ亡命したのだが、90年に自殺。訳者のあとがきによると、この自伝が仕上がったのは亡くなる3か月前のことで、その時すでにエイズを発症しており、最後は口述だったという。極貧の幼年時代から始まり、投獄、脱獄、同性愛者として受けた抑圧、亡命、そして病。運命というのは、本当に、ときにとても苛酷だ。しかしこの本から伝わってくるのは、時代や境遇の激しさだけでなく、作家の内面の激しさ。生き延びるアレナスの強靱さはまったく圧倒されるばかりだが、どんな境遇にあっても彼が捨てない、捨てられない心根のやさしさみたいなものがあって、それにとても惹きつけられる。文章から、強さと繊細さが同時に伝わってくるのは、翻訳者がていねいに訳しているからでもあるのだろう。
本を読んだすぐあとに、この本を映画化した「夜になるまえに」を観たのだが、アレナスを演じた俳優からも、そんなやさしさがたちのぼっていた。 |
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■2004.11.15
「 BASA NOVA ボサノヴァ」(アノニマ・スタジオ)というこの本は、ボサノヴァの50年足らずの短い歴史の教科書。でも、文章は語り口調で、語り口調というのは、読んでいて時々もどかしくなったり、物足りなくなったりするのだけれど、この本は、いい具合に語りが流れていてフラストレーションを感じずに読んだ。
知らないミュージシャンの名前がいっぱい出てきたけれど、今まであちこちで聞きかじっていたボサノヴァについてのあれこれが上手に整理してあって、勉強になりました、はい。
「ボサノヴァはジャケ買いするな、アレンジャー買いしろ」というのは、この世界では常識のひとつらしいのですが、私は初めて知った。ボサノヴァは言葉の響きがいいし、歌詞もとても好きなので、いい曲を聴くたびにポルトガル語を勉強したくなってしまう。この本のおしまいのほうには、簡単なポルトガル語のテキストもついているし、1250円は、とてもお買い得でした。 |
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■2004.11.12
最近お気に入りの画家、那須香おりの作品集「gradation」を買った。装幀も大胆だし、中味はびょうぶみたいな形式の凝った作りなのだけれど、驚くほど嫌みがなくって、いい感じの本。色もきれい。
この人の絵は、焦点がポイントでなく、全体にある感じが好き。引き起こされる感情の中味は、それぞれの絵によって違うけれど、重心がかたよってなくて、風景の遠くに描かれたものからも近くのものからも、同じ量伝わってくる。そこが気に入っている。 |
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■2004.11.1
この間読んだ小川洋子がおもしろかったので、もう一冊。なにしろ、本屋さんに行くと、必ず目につくところにこの作家の本が置いてあるし。
読んだのは「寡黙な死骸 みだらな弔い」(中公文庫)という、思わせぶりなタイトル。短編が輪舞形式でつながっていくのだが、それをいかにもさらっとやってのけている感じがして、力量のある作家なのだなと、改めて思う。
どれも死の匂いを漂わせていることは共通していて、幻想的だったり陰惨だったりするのだが、でも、死を語ることは生を語ることなのだという作者の意志を、強く感じた。 |
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