
おとなになること
サラ・ミッダ/作
江國香織/訳
ほるぷ出版 1553円
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絵本作家というと、夢見がちな現実逃避タイプの人間というイメージを持っていませんか。実際のところ、絵本作家ほどクールにシニカルに世の中を眺めている、毒を持った人種はいないように思います。何と言ったって、世間のジョーシキとか、オトナの常套句とかが通用しない世界で勝負しようとしているのですから。
ここで紹介するイギリスのイラストレーター、サラ・ミッダは、やわらかな水彩のタッチの絵で女性の人気を集めていますが、彼女の絵をじっと眺めていると、物事の細部に注がれる彼女の視線の冷静さには、並はずれた厳しささえもが感じられます。「南仏スケッチブック」は有名なロングセラーとなっていますが、甘いだけの作家でないことは、「おとなになること」という絵本にもよく表れています。
「できないこと」
うたう、おどる、完璧なこどもでいる
空想と現実を区別する
失敗した気持ちから立ちなおる ねこのなき声におびえない
言葉と像をむすびつける
年相応であること(してもいいことだけをする)
そわそわしない……
彼女の言葉は、単なるアイロニーにとどまらず、生きることへのひそやかな絶望と、そこから反転する強い意志を感じさせます。ほどよい加減の繊細さと甘さ、そして江國香織の訳文、人気の秘密はまだまだあるかもしれません。

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