「ヌレエフの犬 あるいは憧れの力」
エルケ・ハイデンライヒ/作
ミヒャエル・ゾーヴァ/絵
三浦美紀子/訳
三修社
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バレエダンサー、ヌレエフが晩年に飼った犬、オブローモフを主人公とする、虚実入り乱れたショートストーリー。かみそりの刃のようなシャープな身体と感受性の持ち主ヌレエフが、体つきも性格もぱっとしない一匹の犬と出会ったのは、カポーティーのパーティー。スノビズムと頽廃の象徴のような場でのこの出会いはちょっと滑稽で淋しげだ。オブローモフというのは、もちろんゴンチャーロフの小説からとられた名前で、そこからもわかる通りおよそヌレエフとは正反対の個性の持ち主だったのだ。でもヌレエフはこの犬のおっとりした存在感を愛し、オブローモフは、いつも稽古場でダンサー達の姿を憧れの眼差しで見ていた。
文章は淡々としている。物語には教訓的な結末もオチもない。けれど、人間と犬、鋭と鈍、この2種類のクオリティが互いに尊重し合う様子が静かに伝わってきて、ちょっと心が痛くなってしまうのだ。
ヌレエフはじめ実在の人物を登場させるちょっと変わった手法が成功していて、雰囲気のある作品に仕上がっている。ミヒャエル・ゾーヴァの絵も、似合っている。
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