●1
「読書からはじまる」
長田弘
日本放送出版協会 1500円

●2
「ハイスクール・ブッキッシュライフ」
四方田犬彦
講談社 2300円

●3
「あしながおじさん」
ジーン・ウェブスター
遠藤寿子/訳
岩波文庫 310円

 
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読書からはじまる



本を読む。それは、「本を読んでいる」という時間のことを言う。期待と不安とが一緒になった手つきでおずおずと表紙をめくってからこころよい陶酔の面もちでページを閉じるまでの時間。それが、本という形なのだ。

 いい本というのは、そのなかに
 「いい時間」があるような本です。
        長田弘「読書からはじまる」----●1

あふれるような本に囲まれて、私たちは、ほんとうに本を読むことができているだろうか。本を本として、正しく体験しているだろうか。

 ‥‥書物というものは何の目的もなしに、
 ひたすらアニマの赴くままに頁を捲(めく)っていき、
 それに飽きたら空のかなたにある雲の形を眺めてみる
 といったふうでないと、
 体験として結実しないのではないかという信念がある。
    四方田犬彦「ハイスクール・ブッキッシュライフ」----●2

これがいい本、というような情報がいい本に導いてくれるとは限らない。そうわかっていながら、私たちはしばしば、本を求めるのではなく、本の情報を求めることに心を走らせてしまう。それによって、ますます本から遠ざかってしまうことを忘れて。

 あなたはあたしの愛読書はどんな本だとお思いになって?
 今読んでいる本のことですの。
     ウェブスター「あしながおじさん」----●3

例えば、孤児院から、開かれた社会に足を踏み出したばかりの少女のようにまっさらな気持ちで本と向き合いたい。いきいきとしたよろこびにあふれた読書の時間を持つこと、それだけが、私たちが本に報いることのできるすべてである 。