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ティーンエイジ・ブルース
世の中には、何かをなくしたら
しつこく何日も探しまわる人間もいる。
でも僕はといえば今までのところ、何があろうとこれだけは
失うわけにはいかないというようなものを
手にした覚えがないんだよ。
たぶんそういうことも
僕が臆病になっちまう理由のひとつかもしれない。
でもだからそれでいいんだ、というもんじゃないよね。
断じてない。
人は臆病であったりしちゃいけないんだ。
サリンジャー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」
学校を追われ、自分の家にも帰れない16歳のホールデン。
かつて16歳であった人は、みなホールデンが嫌いだ。
でも、ホールデンを忘れることができない。
なぜなら、かつて16歳であった人は、みな知っているからだ。
16歳が、どんなに未熟で、こっけいで、情けなかったかを。
そして、16歳の自分が、どんなに必死だったかも。
その夏、私は十七だった。そして私はまったく幸福だった。
サガン「悲しみよ こんにちは」
人は突然、楽園から追い出される。そう、突然に。
追い出された魂は、さすらうしかない。
歯をくいしばって、10代の痛みに耐えるしかない。
拒みながら、抗いながら。
私はこれまで悲しみというものを知らなかった、けれども、
ものうさ、悔恨、そして稀には良心の呵責も知っていた。
今は、絹のようにいらだたしく、やわらかい何かが
私に蔽(おお)いかぶさって、私をほかの人たちから離れさせる。
嘘つきなおとなも、偽りだらけの社会も、自分と同じように、
所在なく漂っているだけなのだと知ったのは
いつだっただろうか?
18歳? 19歳? それとも20歳?
十八歳でわたしは年老いた。
だれでもそんなふうなのだろうか、
尋ねてみたことは一度もない。
デュラス「愛人」
わき上がってくる悲しみ、やるせなさ。
この怒りは一体どこからやって来るのだろう。
許すことはできない、自分も、他人も。
贖罪は敗北だ。
おまえたちはきたない、おまえたちはおれのように
素足で草の茎が槍のように
つきさす野原をかけることのできる体ではなく、
肥満していて、ぶくぶくの河馬のようで、
いやらしくしみったれている。
おれは純粋だ、むくだ、金ぴかだ、
おれの胸の肉を切りさいて血をながしてみろ、
おれの性器から噴出する精液をなめてみろ。
中上健次「十九歳の地図」
懐かしく思い出してはいけない。
痛みを怖れるな。
拒否し続けろ。
そうしたら、今日こそは何かが見えるだろうか。
10代の頃に渡り損ねた、あの深い河のむこうに。
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