「たまゆらの道
正倉院からペルシアへ」
志村ふくみ・志村洋子
世界文化社

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染織家の母と娘、志村ふくみと志村洋子が色を求めて旅をする。日本の神社や寺院にいにしえの色を訪ね、そこから、韓国へ、ペルシャへと旅が広がってゆく。
色の源泉を求めて時間と空間を飛ぶと、そこには想像を遙かに超えた豊かな色彩の世界が展開します。私たちは今、写真やテレビであらゆる色を目にすることのできる便利な環境に生きていると思いがちですが、この本を読むと、薄っぺらい色とも呼べない色彩ばかりが溢れている現実をつきつけられるようです。化学染料を一切持たない昔の人が、野山の植物から色を作る方法にどんなに精通していたか、その片鱗は、仏教美術や能の装束や、源氏物語にも表れているのです。色を感じ、色を楽しむ感性が、視覚的な美意識だけでなく、文学、思想、宗教にも通じる抽象的な概念へと人を導いていたこと、糸を紡ぎ、染め、織るという、緻密な作業の積み重ねが、そんな厖大な色の概念を支えていたという事実には、驚かされるばかり。もちろんそれは、日々、色に仕える仕事をしている、このふたりだからこそ。旅人がその心に宿すものこそが、旅の形をつくってゆくのです。
ぜいたくに収められた、装束や工芸の衣や、染色工房や写真も見応え充分。りりしい文章の書き手としても知られる志村ふくみと、決して母に負けてない洋子が順番に書き次ぐ文章もずしりと重い本。
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