ア ジ ア 現 代 作 家 の 本 

  「活きる」
余華(ユイ・ホア) 飯塚 容/訳 
角川書店 1500円

村で出会った老人が語る、壮絶な人生の物語。それは、地面に這いつくばるような貧しさと、取り返しのつかない過ちによって次々と愛する者を亡くしていく、喪失の歴史。でも、老人の語り口は、不思議にユーモラスなのだ。
あらゆる涙と哀しみをつきぬけた明るさ――それは「生」にたいする深い信頼に支えられているように思える。
  「待ち暮らし」
ハ・ジン 土屋京子/訳 
早川書房 2300円

単身赴任先で愛する女性と出会い、結婚したいと思うが、妻は離婚に同意しない。中国では18年別居すれば、相手の同意がなくても離婚できると知り、主人公の林(リン)は18年間、その日を待ち続け、そして愛人と結婚する。
気づかぬうちに少しずつ変わってゆく愛。18年の歳月はふたりをどう変えたか、そして、結婚したふたりが、そこに見たものは?
この小説からは、ひとりの人間の人生が放つ輝きの深さが伝わってくる。
ハ・ジンは留学先のアメリカで祖国の天安門事件を知り、その時から中国語で書くことを一切やめ、この作品も英語で書かれたという。
  「インモラル・アンリアル」
ウィン・リョウワーリン 
宇戸清治/訳 
財団法人国際言語文化振興財団

著者は現代タイ文学の人気作家。この本には9編の作品がおさめられているが、どれも、世界と自分との違和感、この私という存在にたいする違和感を描いている。タイにおけるここ2、30年の急激な経済発展が背景にあるのだろう。この本に収められた作品のような、実験的な手法をためらいもなく実現してみせる、その自由さ、ナイーブさに、はっとさせられる。
  「電報」
プトゥ・ウィジャヤ 森山幹弘/訳
めこん 1900円

「一人の人間が死んだ。他の者は生き続ける。ある時、人はぼくらのために電報を打つ。その一方で他の者は生き続けなければならない。別の電報がまた彼らの許に届くだろう。そしてまた他の者は生きていく、ん!」
作者はインドネシアの流行作家。この作品は、彼の代表作である。時々登場するインドネシアの地名や、食べ物の名前などを除いてしまったら、これが日本の小説だと言われてもわからないかもしれないと思わせる。
主人公の「ぼく」の日常。食べたり、デートしたり、生きたり、死んだり。登場人物はみないきいきと会話し、行動する。幻想的な味付けも、ほどよく盛り込まれている。
  「グアヴァ園は大騒ぎ」
キラン・デサイ 村松潔/訳
新潮社 2000円

生活につかれてしまった主人公のサンパトは、ある日グアヴァの樹にのぼり、そこで生活を始めた。すると彼を聖者とあがめる人たちが現れて……。まわりじゅうの人々を巻き込んで展開する大騒動を描く、ドタバタ喜劇。ぐんぐん読ませて、笑わせて、呆然とさせる、ばかばかしいほどに面白い小説。