く ま の 本 

  「ゆうびんやのくまさん」
フィービとセルビ・ウォージントン/作・絵 まさきるりこ/訳
福音館書店

絵本に登場するくまたちは、不思議なことに共通して、「くらし」というものにたいする倫理を持っているように思う。絵本にみる彼らのくらしぶりは、みな、ささやかでも質のよい歓びと心地よい秩序に満たされている。そして、そのなかでも、この絵本のくまさんの暮らしぶりにあふれる誠実さは、群を抜いている。このシリーズで、主人公のくまさんは「うえきやさん」や「せきたんやさん」といった職業を経験するが、どの仕事にたいしてもちょっとストイックなくらいなほど、まじめに取り組む。くまは居心地のよい小さな家にひとり住まいで、朝早くから仕事にかかり、夜は早く眠りにつく。単調な仕事を黙々とこなす。この絵本には、くまさんの愛らしさというだけでは説明できない不思議な力がある。
  「ねむれないの? ちいくまくん」
マーティン・ワッデル/文 バーバラ・ファース/絵
角野栄子/訳
評論社

森のなかに住む2匹のくま。このふたりに関しては「おおくまさんとちいくまくん」という名前であることしか語られない。ふたりは親子ではなさそう。でも、深い愛情と信頼の関係で結ばれている。ちいくまくんは、人間でいうと、多分3才くらい。ふたりの暮らすほらあなには暖炉がある。おおくまさんは、若い頃砲丸投げの選手だったらしい。
そんなことを考えながら読んでいるうちに、まぶたが重くなってきそう。典型的な「おやすみなさい」の絵本。ふわふわのくまの毛を身近に感じて、安心した気持ちで眠りに誘われてしまう。
  「ぼくは おおきな くまなんだ」
ヤノーシュ/作 楠田枝里子/訳
文化出版局

けむくじゃらのおおぐまになるためのおまじないは、「ホークス ポークス ヒンウントヘル」。ぼくがもしおおきなくまだったら、と空想は果てしなくひろがっていく。こんなふうに、もし私が何々だったら、と考えていくことは、こどもの、そして大人の基本だ。独特の色彩感覚が楽しい。くまの表情も楽しい。
  「たのしい ふゆごもり」
片山令子/作 片山健/絵
福音館書店

おかあさんのくまと、子ぐま。冬の気配を感じて、ふゆごもりの支度を始める。くまのお母さんは、おいしい木の実をたくさん知っているし、はちみつのとり方も、鮭のとり方も知っている。お料理も上手、ぬいぐるみを作るのも上手。そんなスーパーお母さんなのだ。
それにしても、くまの暮らす家は、どうしてこんなに居心地がよさそうなのだろう。落ち着いた気持ちで過ごす人生の尊さを知り抜いているからとしか思えない。
私がこの本でいちばん好きなのは、ふゆごもりの準備が整ったその晩に、わーっと雪が降ってくる場面だ。そこには言葉もなく、ただひたすらページいっぱいに、輝く雪が舞っている。
    「よるくま」