写 真 の 絵 本 

  「わたしのろば ベンジャミン」
ハンス・リマー/文 レナート・オスベック/写真 松岡享子/訳
こぐま社

いわゆる「動物もの」の写真絵本はたくさんあるのだが、読む者の情緒をかき立てるという点で、この一冊の右に出るものはない。過剰なものがまるでないモノクロの写真たちで表された世界は、人の体温に限りなく近いあたたかみと、見知らぬ国の遠さとを同時に感じさせる。そして私たちはそれを、本を開くたび、何度でもかみしめることができる。
小さなロバと女の子の友情を描いた物語なのだが、ここには「関係」というものの意味が的確に示されていると思う。相手の欲しいものを差し出すこと、ともに時間を過ごし一緒に楽しむこと、お互いの声に耳を傾けること、時には黙って相手のしたいようにさせてあげること。
なぐさめ、はげまし、協力。誰かと誰かの間に交わされるあたたかい心が、この絵本には詰まっているのだ。
それにしても、ロバの、なんとかわいいこと!
  「ひとしずくの水」
ウォルター・ウィック 林田康一/訳
あすなろ書房

見たいものも見たくないものも(もしかしたら、大人が子どもに見せたいものと見せたくないもの、と言い換えるべきなのかもしれないけれど)ひとつの画面に収めてしまう写真の残酷さは、ときに絵本と真っ向から対立してしまう。だが、この絵本の写真は、そんな写真の鋭利すぎる明晰さを逆手に取って、「美しい」ということの、もうひとつの側面を子どもたちに教えようとしているかに思える。明晰であっても、決して冷たくはなく、とってもすっきりとしていて潔いのだ。
しずくや氷や、湯気や霜など、さまざまに姿を変える水についての、いわば科学絵本。でも、人の手のかかっていないものにこそ、このようなきっぱりとした美しさがあるのだと、伝えてくれる。
  「ぽっ ぽの ぽ」
石亀泰郎/写真と文 武市八十雄/案
至光社

「イエペはぼうしがだいすき」など、たくさんの写真絵本を作っている、この著者。ただし、これは、他とはちょっと違った魅力を持っていて、私の好きな一冊だ。ちょっと見た感じは地味なのだが、押し付けがましさがまったくなくて、じんわりと心に優しい。
セピアがかった写真は、つがいのハトをとても近くからとらえている。すっきりとモダンな印象の写真と、本全体をおおっている、くすんだような淡いブルー、そしてユーモラスな言葉が、とっても不思議に溶け合っているのだ。
  「パリのおつきさま」
シャーロット・ゾロトウ/文 タナ・ホーバン/写真 みらいなな/訳
童話屋

パリのスナップショットでつづる絵本。最近の本にはあまりない、横長で大判のサイズが、のどかに広がるパリの風景に、よく似合っている。写真はちょっと古ぼけているけれど、それが、映画のなかのフランスみたいな雰囲気を出している。
この絵本を、魅力的にしているのは、やっぱりシャーロット・ゾロトウによるストーリー。パリを旅行してきたお母さんが、お留守番をしていたわたしに、「パリでいちばんすてきだったのは、おつきさま」と語るラストが、とてもかわいらしい。
  「ウリボウなかよしだいかぞく」
福田幸広/写真 結城モイラ/文
ポプラ社

動物の赤ちゃんをテーマにした写真は、大人にも子どもにも人気抜群だから、そういう絵本もたくさんあるのだけれど、被写体のかわいさに寄りかかりすぎてしまっているものは、いまひとつ面白みに欠けて物足りなさが残る。そんななかで、唯一絶対的に気に入っているのが、この一冊。
イノシシのお母さんたちが、子どもを連れて川べりに遊びにやってきて、水浴びしたり、はしゃいだり、おっぱいを飲んだり。イノシシの子どもをウリボウだなんて、誰が最初に読んだのかと、思わず笑みがこぼれます。行列をつくってトコトコかけまわる様子は、愛嬌いっぱい。とっても陽気な絵本。
  「もういちどそのことを、」
五味太郎/作・構成 寺崎誠三/写真
クレヨンハウス

私たちの身の回りの、小さなこと。何気ない光景、慣れ親しんだものたち。例えば、ドアのノブや、鉛筆の先といった、取るに足らないものの中に潜むかすかな気配。それは、そんな、名づけ得ぬものの存在だけに目を向けた絵本。写真とことばのたくみな組み合わせが、ほんとうはすごく抽象的なことを、とっても具体的に示してくれる。もちろん、具体的と言ったって「これ」と教えてくれるわけではなく、その感触の確かさを伝えてくれる、という意味なんだけれど。
基本的には「クリスマス絵本」に分類されるのだろうが、そういう枠組みをはめるのは何だかもったいない。スピリチュアルなものを感じるのは、クリスマスだけではないのだから。
  「ゆげ」
大沼鉄郎/文 小川忠博/写真
福音館書店

寒い日の息、お鍋からたっている湯気や、湖にかかったもやなど、いろんな湯気を集めた写真集。シンプルなつくりだけれど、モダニズムの匂いを感じる素敵な絵本になっている。モノクロの写真は、湯気に含まれる水滴ひとつぶひとつぶの存在を伝える。そして、生きているものが持つ水と熱、そして、それらを取り巻く環境として存在する水と熱が伝わってくる。
  「めであるく」
マーシャ・ブラウン/文と写真
谷川俊太郎/訳 佑学社

私のとても好きな本。世界への驚き、自然への畏敬、イマジネーションの大切さなどを、写真と言葉で伝えてくれる。海や森や湖や草花を写した写真は、ネイチャー雑誌などに載っているものに比べれば素朴で何気ないものだが、目を刺激するような美しさではなく、心の深くをやさしく揺り起こすような美しさなのだ。この絵本で表されている感情は、昔から人間が自然との触れ合いによって育ててきた感情の本来の姿に近いもののような気がする。
そして、なんと言っても言葉がよい。「みること それはめであるくこと あたらしいせかいへと」というふうに始まり、「あなたのせかいのはじっこからむこうをみるんだ。あなたのめをあるかせるんだ」という呼びかけで終わる、美しい詩。生きていることの幸いを感じる。
    「たかちゃんとぼく」
「ふゆめ がっしょうだん」
「はるにれ」
「「イグルー」をつくる」