東 京 の 本 

  「東京迷路 鬼海弘雄写真集」
鬼海弘雄
小学館

1973年から撮りためられたトーキョー・ラビリンス。空間のポートレイトとしての風景写真。アンジェイ・ワイダ、種村季弘、赤瀬川原平の文章も収められている。「キカイ・ヒロオの写真には、抵抗しがたい強烈な詩情が溢れている」(ワイダ)。
  「乱歩と東京 1920 都市の貌」
松山巌
ちくま学芸文庫

1920年代の東京都市空間から江戸川乱歩の世界がぬらぬらと立ち上がってくる。都市や建築だけでなく、資料文献を巧みに展開しながら、当時の庶民の暮らしを描き出していく著者の手腕は見事。「乱歩」と「東京」というこの2者の魅力がお互いを照らし合う一書。
  「大東京バス案内(ガイド)」
泉麻人
講談社文庫

バスに乗るのが好き。どこへ行くのにも遠足みたいな気分にさせてくれるから。昼下がりの住宅街を縫うように走っていくバスというのは、大げさではなく、東京だけでしか得ることのできない数少ない幸福のひとつだと思う。だから、この本に私が愛用しているバス路線の記述を発見したときは、嬉しくなってしまった。路線バスに乗るのは、ちょっと速度のある散歩みたいだ。
  「東京見おさめレクイエム」
横尾忠則
光文社知恵の森文庫

八雲「むじな」の紀伊国坂、「小僧の神様」の神田、寺田寅彦「団栗」の小石川植物園、荷風「曇天」の不忍池など、小説の舞台となった東京を横尾忠則が歩く。横尾独特の感受性に触れながら歩く東京。
  「つゆのあとさき」
永井荷風
岩波文庫

「女給の君江は午後三時からその日は銀座通りのカッフェーに出ればよいので、市ヶ谷本村町の貸間からぶらぶら堀端を歩み見附外から乗った乗合自動車を日比谷でおりた」。こんな書き出しからして、昔の東京の街のざわめきが聞こえてきそうに思える。
  「東京本遊覧記」
坂崎重盛
晶文社

しょっぱなに「東京生まれ、東京育ちのくせに、東京に強い憧れを抱きつづけてきた」とある。うん、わかる、わかる。
東京の本をばかりを集め紹介しているが、ブックガイドの枠にはおさまらない。東京論でもない。ページの間に見えてくるのは、本を片手に東京をのんびりとうろつく著者の姿。そして、路地裏や横町に消えていった、人々の暮らしのざわめき。なかなかに贅沢な東京の旅である。
  「橋を渡るは」
井上洋介
架空社

井上洋介の木版画作品。小型の画集、そして絵本。東京下町の橋が14本。橋と一緒に橋を渡る人の姿も必ず描かれている。東京下町の橋への愛着が、じんわりと感じられる。