架 空 世 界 の 本 

  「鼻行類 新しく発見された哺乳類の構造と生活」
ラルト・シュテュンプケ 日高敏隆・羽田節子/訳
平凡社ライブラリー

1941年に南の島で発見された哺乳動物、ナゾベームについての本。1個もしくは多数の鼻をもち、鼻を使って歩く。その後、ある秘密裡に行われた核実験によって、この南の島は消滅してしまったという。そして、ナゾベームたちだけでなく、研究者や、研究資料や膨大な資料が失われてしまったのである。
動物学の本として完成された体裁、ウソの巧みさも見事だけれど、なにしろ「鼻で歩く」という発想の奇抜さが、この本の肝。
  「シュテュンプケ氏の鼻行類」
カール・D・S・ゲーステ 今泉みね子/訳
博品社

「鼻行類」の魅力、そして「鼻行類」という本が含むさまざまなテーマ、例えば「科学」「メルヘン」「ダーウィニズム」などを取り上げて考察している。「鼻行類」の本が出たあとの反響や、シュテュンプケの原稿をまとめ本にしたシュタイナー氏へのインタビューなどがおさめられていて、「鼻行類」をより楽しむことができる。
  「ランゲルハンス島航海記」
ノイロムニス・N・フリーゼル 内藤道雄・奥田敏広/訳
博品社

イギリスのある稀覯本収集家の蔵書にはさまれているのを発見されたドイツ語の航海記。数々の仕掛けとパロディが無数に盛り込まれていて圧倒される。
  「虚数」
スタニスワフ・レム 長谷見一雄・沼野充義・西成彦/訳
国書刊行会

架空の書物のまえがきを集めた、「完全な真空」の続編とも言える本。「完全な真空」は、いくぶんシニカルな批評精神に彩られていたが、こちらは、コンピュータが書いた文学についての本「ビット文学の歴史」など、「こんな本があったら楽しい」という高揚感が本全体から伝わってくる。
  「本本堂未刊行図書目録」
坂本龍一
朝日出版社 絶版

刊行希望、または刊行妄想のブックリスト。井上嗣也、菊池信義などによる装幀サンプルつき。20年近く経とうとしている今また読み返す楽しみもある。村上龍「小説・経済論」はほとんど実現されつつあるし、ジュリアン・バコット「樹木状網目 思考の原初的図式」は、インターネット時代の現代にこそ読まれるべきという気もするし、中上健次「神曲」はぜひ読みたかったと思うし、柄谷行人「注釈 森敦・意味の変容」は、多分もう期待できないだろうな、と思ったりする。
  「すぐそこの遠い場所」
クラフト・エヴィング商會
晶文社

今は亡きおじいちゃんが遺した事典。アゾットという国のアゾットの人が記したしたという事典。開いてみたらそこに書かれていたものは‥‥。架空世界の本質をつくようなつくりの本。