蛸しゃぶ、というのだろうか。
薄く透けるようにそいだ蛸を、
たぎった鍋の湯にひらりと落とし、
浮いてきたところをすかさず箸にとる。
ポン酢をつけて食べると、蛸の甘みと
柑橘類の香りが口の中でとけあって、
これはまた玄妙な味わいである。
----川上弘美「センセイの鞄」

ずっと年上のセンセイとツキコさんの、静かで、せつなくて、深い情熱を秘めた恋。もう充分におとなのツキコさんと、ほとんど老人まるだしのセンセイは、この小説の中でおいしそうなものをたくさん食べます。日本酒に鮎に、湯豆腐といったシンプルなごちそうをしみじみと味わうのです。
はじめてのふたりきりの旅行は小さな島。旅館でのディナーは海の幸。透明で少し歯ごたえあって、深い甘さのある蛸の味は、ふたりの恋にちょっと似ているかもしれません。
「センセイの鞄」
川上弘美
文春文庫

ホワイトアスパラガス 甘いオムレツ 黒豆の納豆 蛸しゃぶ 朝のスウプ 麦チョコ アイスクリーム
 ウォッカ・トニック オレンジと熱いコーヒー シナモンロール カリメラ 神様にささげるごちそう 葛の花のジャム
しょうがクッキー 葡萄酒とウエーファー ジンとレモンの熱い一杯 ダイコンのおみおつけ