私と弟はすっかり窮屈になった部屋の隅で
深皿に盛られた麦チョコを食べた。
皿から手掴みして一気にほおばっても、
一つだけつまんでかりりと囓っても、
どのように食べても麦チョコはおいしかった。
----長嶋有「サイドカーに犬」

母が家を出た。ぐうたらな父親は仲間を呼んで家で麻雀のやり放題、そして、愛人「洋子さん」が家にやってきた。大ざっぱで、飾り気がなくて、自由で、そんな洋子さんと過ごしたひと夏を思い起こさせるのが、麦チョコ。
チョコレートなのに、ちっとも洋風じゃなくて、どうやったって上品には食べられない。強い個性もなく、贅沢でも質素でもない。でも、普通でありきたりのものが持つふところの深さっていうのは、ときに、その人まるごとを包み込んでもあまりあるほどだ。
この作品は、芥川賞受賞作「猛スピードで母は」の本におさめられてます。
「猛スピードで母は」
長嶋有
文春文庫(写真は単行本)

ホワイトアスパラガス 甘いオムレツ 黒豆の納豆 蛸しゃぶ 朝のスウプ 麦チョコ アイスクリーム
 ウォッカ・トニック オレンジと熱いコーヒー シナモンロール カリメラ 神様にささげるごちそう 葛の花のジャム
しょうがクッキー 葡萄酒とウエーファー ジンとレモンの熱い一杯 ダイコンのおみおつけ